自動車整備業界は今後大きな変革期にー整備士の仕事が激減の予測

国内の人口が減り、IT化が進み、車の販売台数が減る。

先日、トヨタの豊田章男社長が、新卒入社激励の挨拶にて「激動の時代だからこそ今を変える覚悟を持つべき」とお話されているのがニュースで取り上げられていました。さらに、「就職して安泰と思わず、未来を切り開くことが皆さんの使命と考えてほしい」とも話していました。

どの職種に勤めていても、同様に不安定さはあるけれど、特に国内の自動車整備業界は切実で、今後10年もの間に、整備の仕事が激減してしまう可能性があります。

これから業界として、大きく変革を強いられることは必至です。

整備業界といえども、セールスや受付などの職種は他業界にも応用が利きやすい。

例えば、セールスならば他の業界でも営業の仕事はあるし、受付でも他の業界で受付や事務の仕事があります。

だけど自動車整備士は、「車」に依存してしまいがちで、専門性が高い分、車以外の仕事に応用が利き難い

また、異業種転向を考える方も多く、整備で培った経験を活かせる異業種の仕事って競争率が高いんです。

その競争に勝つため、或いは自分だけの専門性を携え整備士として生きて行くにせよ、まずは今の現状を理解し、危機感を持って自分だけの専門スキルを磨いていくべき局面なのです。

自分だけの専門スキルを選択をするためには、まず、現在起きていることと、近い将来の整備業界がどうなっていくのかを理解するべきです。

何を専門スキルとして身につけるべきなのか、今するべきことが何かを正しく判断し、それをもってどのようにキャリアを描いていくかを考えていくべきです。

なぜ、自動車整備の仕事が激減していくのか?

大きくは国内の車の販売台数が減ってしまうことにあります。

自動車整備士の仕事減少の理由

自動車整備士は「地元密着の仕事」

整備の仕事は車のお医者さんとも呼ばれます。

車を修理し、人の命に間接的に関わることもある。

自分や家族の命に関わる病気であれば、名医がいるのならば、国内に止まらず海外に行ってでも治しますよね。

しかし、車の場合は遠征してまで修理を出すことはそうそうないです。

今の自動車整備士の仕事は、地元のお客様への地元密着の仕事になります。

だから、仕事の有無が、国内の流通台数によって大きく煽りを受けることになります。

自動車の販売台数の減少

車が売れないとディーラーの仕事は当然減るし、車の流通量が減り、それだけ”整備”の仕事が減ってしまいます。

それではなぜ、販売台数が減ってしまうのか?その原因を挙げていきます。

少子高齢化で人口が減る分、販売台数が減る

少子高齢化って言われても漠然としていて、仕事に紐付けにくいですよね。

でも、これからの働き方を考えるには切っても切り離せない問題になります。

日本の年齢区分別将来人口推計(万人)

あと10年で748

万人の人口が減り、20年で1,682万人減る。

想像もつかない数字ですが、埼玉県の人口に匹敵します(2017年1月時点の埼玉県の人口=728万人)。

首都圏の一県が消滅するほどの人口が減る

…そう考えると、恐ろしい数字です。

車って、洋服のように、一人がいくつも購入できるわけではない。

それこそ、日本人の所得が大幅に上がらないと、一台を保有することすらが難しい代物。

女性でも車に乗る人が増え、一時は販売台数も増加したけれど、リーマンショックを皮切りに頭打ち状態。

国内の人口が減る分、当然比例して、国内での自動車の販売台数は減ってしまいます。

格差社会、低所得者が増えるため国内全体の販売台数が減る

既に30%以上が60歳以上だという現実。

2020年の段階で、32%が60歳以上(既にこの時点で驚きですが)、あと10年で38.7%、20年で43.4%が60歳以上になる予測です。

高齢者の運転事故が相次ぎ、自動運転機能などを搭載した車の必要性が巷で謳われています。

特に過疎地域など、車が生活の一部の地域では、購入者は増えていくでしょう。

だけれど、60歳以上の人の働き先が少ない

少子高齢化 車の所有は家計を圧迫する

高齢者の方は、働き盛りの方に比べると所得が下がってしまう方が多く、そもそも、大多数が都市部に住んでいます。

だから、所得が下がるにも関わらず、家計を圧迫する車をわざわざ保有する必要がない。

格差社会ということを考えると高級車の需要は伸びたり、過疎地域など、生活に車が必要不可欠な場合は販売台数が増える可能性も考えられます。

けれど、国内の人口の大半を占める高齢者が車を所有できるだけの所得を持ち合わせておらず、その結果、日本全体での販売台数は減っていくと考えられます。

テクノロジーの進化により車を所有する必要がなくなり、販売台数が減る
カーシェアリングの普及の影響

現在、特に欧米を中心に、急速にシェアリング系サービスが普及していっています。

BMW、GM、フォードなどの欧米の大手自動車メーカーが、相次いで「カーシェア」事業に参入

<参考>販売台数40%減の衝撃予測 自動車産業の脅威「次世代カーシェア」

2025年までには、世界の自動車全体の20%がシェア利用になると言われています。

カーシェアの普及が急速なことを裏付けるように、今日本で主流のカーシェアリングのみならず、新しいシェアリングも普及しだしています。

ライドシェア
自家用車を持つ消費者が、空き時間などを利用して「ドライバーとなる」サービス。
C2Cシェア
自分が車を使わない時間に、「他の消費者に車を貸す」というサービス。

 

シェアリング系サービスが普及すると、車を所有する人が減ります。

シェアリングの加速により、自動車1台あたりの走行距離が2~4倍程度に伸び、結果として自動車の世界販売台数は今後十数年の間に40%程度減少すると予測されている。

<参考>ウォール・ストリート・ジャーナル

発展途上国などこれから車を所有できる収入がある人が増える国もあります。

それにも関わらず、1台あたりの走行距離が伸び、十数年の間に40%も販売台数が減ってしまうのです。

日本のみにフォーカスすると、車を所有する人も減るため、販売台数が相当減ることが安易に予想できると思います。

 

現在日本では規制の問題で、シェアの仕方にあまり多様性はないです。

それでも、カーシェアリングの伸びはすさまじい物があります。

私も2014年からタイムズのカーシェアを利用しています。特に2016年までの2年間は良く利用していました。

カーシェアリング

初期の頃は予約がスムーズに取れたのが、2年経つと予約が取りづらくなる一方、カーシェア用の駐車場がみるみる増え、タイムズカープラスマークがついた車が目に見えて増えるなど、急速にカーシェアリングが増えたことを実感しました。

今後、外国で既に開始しているようなサービスも普及し、カーシェアリングは増えて行くでしょう。

2015年5月 DeNAが個人間カーシェアサービス「Anyca」を開始

整備の仕事に置き換えると、カーシェアリングなどのように、法人が所有する車の整備の仕事は増加して行くものの、一般顧客から依頼され整備することが減ります。

総体的には、自動車整備の仕事は減ってしまいます。

自動運転機能搭載の影響

政府は、2020年の東京オリンピックに向け、無人の自動運転車を実現するという目標を、2017年4月1日に発表しました。

① 交通事故低減等 国家目標の達成

② 自動走行システムの実現と普及

③ 2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を一里塚として、東京都と連携し開発

<参考>内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) 自動走行システム 研究開発計画」

あと3年を目途に、自動運転車が現実になります。

街を走る自動運転車が当たり前になるのが、2030年頃のようです。

自動運転機能搭載で、さらにカーシェアリングが便利なものになります。

先に記載の通り、カーシェアリングの普及は、販売台数の減少の大きな要因です。

自動運転車が普及すると、そもそも所有者が運転をする必要がなくなり、駐車場に止めている間でも、無人の状態で他の消費者の移動手段として使われることになると考えられている。

<参考>ウォール・ストリート・ジャーナル

自動運転で迎えに来たり、空き時間でも稼働し、一台当たりの走行距離が延びます。

さらに、自動運転機能の搭載により、今までのような「車を運転する楽しみ」がなくなります。

楽しい!かっこいい!などの感情的な思い入れが薄くなるのであれば、単純に安価で便利な移動手段として利用できる方が良いですよね。

ドライブ

つまり「車を所有する」意欲が薄れてしまうことにつながります。

また、わき見運転、飲酒運転、無茶にスピードを出す…などから発生する事故は、「人間だから」起こしてしまうのです。

つまり、車が壊れにくくなります。

それ自体は良いことなのですが、車が壊れないと「車を修理する」自動車整備士の仕事は減ってしまいます。

若年者の車離れ

今の若い人にとって、一昔前のように、「車を所有することがステータス」と考えている人が減りました。

子どもの頃当たり前だった国道沿いの走り屋の暴走音や、10年前には繁華街に居た「ヤン車」を、”ほとんど”見なくなりました。

今の若年者層は、バブル後の大不況~景気低迷で、親のリストラなどを間接的に経験してきていて、現実主義的な考えの人が多く、

バブルを経験してきた世代に比べ、無茶にお金を使わないのだそうです。

若年者の思考

一昔前は若年者にとって憧れの対象だった自動車が、スマホなどの実用的な電子機器に取って代わられています。

自動車は「持つ」ものから「使う」ものへと急速に変化しつつあります。

また、一般消費者がお金を使う目的が、「物」を買うことから何かを「する事」へと、変化して行っています。

”モノへの執着はなく、モノの所有には消極的であることが理解できる一方で、旅行や学習、エステ、マッサージなど、いわゆるコトには強いニーズがある。”

<参考>「モノ消費」から「コト消費」へと変化する生活者の価値観

このような思考の変化が、車の販売台数の減少を後押しします。

販売台数が減ってしまうということは、保険も、付属品も合わせて売れないという結果を招きます。

自動車整備士不足によりグローバル化が急速に進む

人口の減少に伴って、働き方が多様化して行っています。

どんな業界でも外国人の積極受入をする企業が急増しています。

人口減少で日本全体で働く人が少ないという状態ですが、その中でも群を抜き、自動車整備士不足は深刻です。

以前は、外国人の方を積極的には受け入れなかった自動車整備業を営む企業も、ここ数年で、発展途上国の出身の方などを雇入れる企業がかなり増えました。

自動車整備士のグローバル化

また、日本の自動車整備の技術は「高度で質が高い」ということで、日本の整備士を目指す外国の方も多いのです。

整備士不足とグローバル化の風潮。

これに伴い起きる懸念は、「急速に日本の整備士が外国の方に取って変わられてしまう」ということです。

自動車整備士のこれからの働き方

ここまで、自動車整備士の仕事が減ってしまう理由を挙げてきました。

では、自動車整備士の仕事は今後、なくなってしまうのでしょうか?

答えは “ノー” です。

ただし、現在大きな変革を求められています

日本の経済を下支えしているのは自動車です。

また、google・AppleなどのIT企業や大手企業が参入してきています。
それだけ今後の伸びしろに期待ができるほどの大きな経済規模があるのです。

車はなくならないのです。

車が変化し自動車整備士の仕事も変化していく

そして、携帯端末がガラケーからスマホに一気に変化したように、車は姿形を変えていきます

変化していく車を修理する自動車整備士の仕事も、「今のままの在り方ではない形」に変化していくことは否めません

よく整備士さんから、「車が家電製品にみたいになってしまって整備が面白くない」という話を伺いましたが、日本経済を牽引する自動車産業が生き残っていくためには、自動運転機能の搭載などのIT化・コンピュータ化に対応する必要があります。

「自動車整備士は給料が安い」「残業が多い」などという問題に対しても、IT化・コンピュータ化に対応できないと、給料・待遇面改善どころか、仕事すらが危ぶまれてしまう状況です。

変化にいかに柔軟についていくことができるのか?が今後自動車整備士として活躍し、給料などの待遇面をもアップしていくためのカギとなります。

近未来の車の姿を考える

ドライバーの仕事は、ロボットや自動運転機能に代替されていきます。

実際に、様々な企業が運転の自動化事業に乗り出しています。

Googleの親会社であるAlphabetが、自動運転技術を専門とする新企業Waymoを設立(2016年12月13日)

アップルの自動運転車が公道へ!カリフォルニアで認可取得、3台のレクサスで走行開始(2017年4月)

IBMが自動運転特許を取得 人間と自動運転車、2種類のドライバーを見守る、「第3の頭脳」のような存在(2017年3月30日)

ドミノ・ピザが自動運転デリバリーロボットDRU(ドリュー)によるデリバリーを2017年夏からヨーロッパでスタート

DeNAが日産の製造する自動運転車両を活用した新たな交通サービスのプラットフォームを開発することを決定(2017年1月6日)

Yahoo! JAPANが自社サービスとの連携やビッグデータの活用をし自動運転分野に本格参入へ

SBドライブへのYahoo! JAPANの資本参加とソフトバンクの追加出資により、自動運転技術を活用した特定地点間を往来する路線バス型などの地域公共交通や、大型トラックの隊列走行による幹線輸送などへ取り組む(2017年3月24日)

その分、今後の車の在り方は、「運転のしやすさ」を追求するのではなく、「移動手段」としての利便性とその中で得られる楽しみを追求して行くことになります。

つまり、車の中で行われる「コト消費」=サービスを追求していく必要があります

フォードのマーク・フィールズCEOは「フォードは、自動車メーカーから、自動車サービス企業に変わる」と宣言

プライベート空間を活かした娯楽設備を搭載した車や、カフェのような店舗型の車が、人件費がかからない分比較的安価に提供される可能性があります。

また、自動運転車専用レーンなどが整備されれば、車が5cm間隔で200kmも出して列をなして走るようになるかもしれません。

自動車整備業界での働き方の変化に柔軟に対応する

カーシェアリングが急速に増えたり、宅配系のサービスが活況だったりすることにより、法人が所有している車も急速に増えることになります。

今の自動車整備士の仕事は地元密着の仕事だと冒頭に書きましたが、法人でたくさんの車を抱えることにより、大量にメンテナンスをしないといけないということも考えられます。

車を輸送することにドライバーが必要なくなることにより、賃金を安く抑えることができます。

燃料代の問題はあるものの、今までより比較的広い地域から自動車メンテナンスの仕事を依頼される可能性もあります。

医療の分野では、お医者さんが遠隔で手術をする技術なども開発が進んでいます。遠隔で車の不具合を確認したり、修理を完了する技術が進む可能性もあります。

また、自動車自体をどんな会社が保有するのかによりますが、今までなら考えられなかったような、IT企業で自動車整備士が必要とされることになるかもしれません。

交通事故が減り車が壊れにくくなり、オーバーホールなどの重整備は需要が減っていくことも考えられますが、無人では細かな不具合に気付きにくかったり、一台当たりの走行距離が飛躍的に伸びることにより、反対に壊れにくくするためのメンテナンスの仕事は増える可能性もあります。

5 ~ 6 年後は車齢が 20 年、走行距離が 20 万キロの車も多く存在するようになり、 整備需要の増加要因になるものと考えられる。

<参考>自動車局整備課「自動車整備事業の将来展望に向けたビジネスモデルに関する事例調査について」

その際に必要なコンピュータ診断は勿論、これから広がりを見せる様々なITサービスと連携する知識など、車プラスαの専門性の高い知識や新しい知識は欲されることになるでしょう。

求められる自動車整備士以外のスキル

車がメーカーや国・車種ごとに構造や整備の仕方が違うように、ITに関しても同様、何を提供するサービスか?でジャンルが多岐に分かれます。

様々なITサービスとの連携が進む過程で、自動車整備ができ、かつ何らかのITとの融合における「ピンポイントの知識」は、個人個人違うものを持つことなります。

サービスが広がる分、個々の専門性が非常に高くなり、必要な専門知識がある方が「希少」になります。

「希少価値」が上がればより欲され、欲されれば紐づいて、給料をアップさせることに繋がります。

燃料が枯渇しているため、新しい燃料に変化していきます。

変化する燃料そうすると、新しい燃料に対応するための知識も必要になります。

また、人口の減少により、働き方が多様化して行っています。

少子高齢化に伴い、日本はたくさんの外国の方を受け入れて行く必要があり、グローバル化が進みます。

しかし、言葉や文化のちがいという壁が立ちはだかります。

そうすると、その壁を打ち壊して日本のより良い整備技術を伝え・教えることができる「日本人の自動車整備士」が必要になります。

整備を教え・伝える人が必要

いくら時代が変化しようとも、IT企業が参入して来ようとも、「自動車整備」の知識は、自動車整備士が一番専門性高く持ち合わせているのです。

そして、「新たに何の知識を身につけて行くか?」ということが重要になります。

まとめ

少子高齢化やIT化、グローバル化の影響を受けて、自動車業界は恐らく今後10年あまりの間に大きく変わります。

トヨタの社長が「今を変えるべき」と言っている通り、このままの状態は長くは続かないでしょう。

だけれど、自動車関連産業の雇用は日本全体の1割を担い、出荷額は全製造業の2割近くを占め、雇用・経済の両面で日本を支える基幹産業なんです。

今の状況とこの産業の今後を踏まえて、自分自身のキャリアをきちんと見定めることがとても大事なことだといえます。

日々を漫然と過ごすのではなく、目的を持ち、そのために「今」何をやるべきかを見定め、キャリアステップを歩む局面です。

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